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数分後、與也と佑は貴斗達に追いついた。
『それにしても何もねぇなぁ』
貴斗は周りを見ながら言った。
確かに周りには木しかない。
この道は森の中を通っているのだ。
唯一見えるのは青空だけ。
太陽はもう貴斗達の真上にある。
『まぁそんなこと言うなって。もうちょっと広い心を持てば、大丈夫だ』
隣にいた鼎寛が半分スキップで歩いている。
『何が大丈夫なんだ……』
鼎寛の言った大丈夫の意味が理解出来ない。
言った本人も、
『ん?なんか』
と、テキトーに言って終わらせてしまった。
しかし、この中に1人だけ、後ろを警戒している者がいた。
そう。それは與也だった。
先ほどから與也は後ろが気になっていた。
與也はサッカー部であり、ディフェンスをやっている。
サッカーというものは周りをよく把握しておかなくてはならない。
後ろから相手が来ても、オーラというか何というか……。
まぁそんなものを感じる。
今がまさにそれだった。
後ろに誰かいる───
そう思った與也はみんなを呼び止める。
『お前ら、ちょっと先に行っててくれ!!ちょっと休憩するから』
他に理由が思い付かなかったのか、単純なことを言った。
『そうか、なら先に行ってるからな!!』
貴斗…………お前が単純な性格でよかった!!
そう心の中で礼を言った。
だが、さすがに佑と雅彦は騙せない。
見るとこちらを心配そうな顔で見ている。
『ちょっと休憩したら追いつくから、心配すんな』
雅彦が"そこまで言うなら───"と、踵を返して再び歩き始めた。
仕方なく佑も雅彦について行き、貴斗と鼎寛は鼻歌を唄いながら行ってしまった。
『さてと───』
と、両手を腰に当て、
『ダーグラ、あの茂みに隠れるぞ』
『はっ?なんで?』
『いいから早く!!』
しぶしぶ茂みに入り、様子をうかがった。
数分後、1匹のガルマが茂みから出てきた。
あいつは───
と、姿を見るなり茂みから出て道を塞いだ。
『お前、何やってんだ?』
目の前のガルマに問いかける。
そのガルマは昨晩見かけたサキュバスであった。
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