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『あ……あたしはただ散歩してただけで……』
『ほぅ……』
と相手をバカにしたように笑い、
『じゃあなんで俺達の後をつけて来るんだ?』
鋭い目つきでサキュバスを見据える。
『べ……別につけてなんか!!』
サキュバスは與也の顔をチラリと見た。
明らかに信じていない顔でこちらを見ている。
『で?』
『だからあたしは───』
『お前なぁ……もうちょっとマシな嘘つけよな』
さっきテキトーな言い訳を言ったのは誰だ……。
『はい、そこ突っ込まない』
『……?』
誰に向かって喋ってるの?
と思ったサキュバスだが、そこは聞かないでおいた。
『で、話は戻るが……』
またサキュバスに向き直り、問いただした。
『なんでついてきた?』
とうとうサキュバスも観念し、事情を話し出した。
『き……昨日覚えとけって言ったでしょ?』
少しモジモジしながら告げる。
だが、さすがは與也。
持ち前の鈍感さでその様子に気付いていない。
『だから今日はその…………』
『うん?』
ようやく與也はサキュバスが照れていることに気付いた。
『何照れてんだ?』
『う……うるさいわね!!/////』
何故怒る?
與也はわけが分からず、首を傾げる。
隣にいたダーグラが袖を掴み、引っ張った。
『ん?』
『鈍感過ぎるよ……』
『はっ?』
ダーグラはやれやれといった顔で與也の顔を見つめた。
あっ……この人分かってないや……。
ヒュオォォォォォ、と虚しく風が吹き付けた。
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