花売りの少女1

3/4
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
 街の周りを囲うように流れる川。東西南北にはレンガで造られた橋が架かっていて、街に入るには必ず通る道だ。  特に東西は主要道路と繋がっているので人通りも多い。そして、「家」もまた橋の東西に集中して存在する。  そうした中、少女の「家」は最も静かな北の橋の下にある。北には森と山しか無いので、こちら側の街にもそんなに人は居ない。だからこそ、ここを選んだ。    拾ってきた廃材を組み合わして作られたそれは、彼女にとってのまさに「家」だ。 「はぁ…」  稼ぎの無かった事に少し気落ちしながら、寒さ避けにボロボロな毛布にくるまり、森で拾ってきた木の実を口にする。 「ん…っ」  口の中に渋い味が広がるが、構わず飲み込む。 「……これからどんどん寒くなるよね」  季節は冬。秋は森に行けばある程度食べ物には困らなかった。けれど、あと十日もしない内に雪がちらつくだろう…。  外に暮らす少女にとって、最も過酷な季節がやってくる。 「家の補強。しないとな」  工具も無ければ知識も無い少女の造った家だ。隙間はそこらにある。最近は隙間風も馬鹿にできなくなって来た。 「また、とってこないと――」  
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!