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街の周りを囲うように流れる川。東西南北にはレンガで造られた橋が架かっていて、街に入るには必ず通る道だ。
特に東西は主要道路と繋がっているので人通りも多い。そして、「家」もまた橋の東西に集中して存在する。
そうした中、少女の「家」は最も静かな北の橋の下にある。北には森と山しか無いので、こちら側の街にもそんなに人は居ない。だからこそ、ここを選んだ。
拾ってきた廃材を組み合わして作られたそれは、彼女にとってのまさに「家」だ。
「はぁ…」
稼ぎの無かった事に少し気落ちしながら、寒さ避けにボロボロな毛布にくるまり、森で拾ってきた木の実を口にする。
「ん…っ」
口の中に渋い味が広がるが、構わず飲み込む。
「……これからどんどん寒くなるよね」
季節は冬。秋は森に行けばある程度食べ物には困らなかった。けれど、あと十日もしない内に雪がちらつくだろう…。
外に暮らす少女にとって、最も過酷な季節がやってくる。
「家の補強。しないとな」
工具も無ければ知識も無い少女の造った家だ。隙間はそこらにある。最近は隙間風も馬鹿にできなくなって来た。
「また、とってこないと――」
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