花売りの少女1

4/4
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
 ドサッ 「ぅッ」  立ち上がろうとして足をひっかけてしまい、その場でこけてしまったのだ。  少女は自分の口の中でする泥の味を感じながら、 「……お母さん」  嗚咽を洩らした。しかし、涙は出なかった。出し方も忘れてしまい、出せばそれだけ水分が減ってしまう。自分にそう言い聞かせてやってきた。 「辛いよ…」  彼女の母親の生まれはこの街より海を越えた、はるか遠くの島国だという。  そこにある国のたくさんある村の一つで生まれ育ったという。  そのまま平穏な日々が続いていれば、母も彼女もこんな目には合わなかった。  そう、彼女の母親は…絶望の中で、少女を産んだ。  ただ皮肉にも、絶望が存在しなければ、少女も存在しなかったのだ。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!