母の国

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 現在、少女がいる大陸から見て、海を挟んで東には島国がいくつか点在している。その中の最も巨大な島国。ここの数ある村のひとつが少女の母親の故郷である。 「それじゃ、行ってきます」  村に名前は無い。農業と畜産によって稼ぎを得る、という事だけが特色。他にこれといってなにかある訳でもないが……少なくとも村人の誰もがそれを嘆いている訳ではない。 「あら、今日はどうしたの?」 「あ、今から森の花畑まで行ってくるんです」 「アンタも好きね~。お花もいいけど、ちゃんとイイ男見つけないと……」 「でも、私そういうのは――」 「もう数年したら成人――大体の国では十五歳から大人として扱う――なんだから。ただでさえ、戦争のおかげで働き手が減ってるんだ。オバさんみたいに八人は産みすぎだけどね!」  昨今の戦争によって大人の男。特に若者はほとんど村に居ない。残っているのは老人か女子供だけ。  しばらく戦争が続けば、また徴兵があるかもしれない。次に連れて行かれるのは子供。そうなれば働き手がかなり減り、また戦争によって税金もあがる。この悪循環にはどの村も頭を抱えているという。
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