母の国

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「あれ? なんだろ」  村の集会場に使われている広場に、人だかりが出来ていた。  人だかりと言っても百にも満たない数だが、これですべてなのだ。 「あ、オバさん。何があったんです?」  見覚えのある顔を見つけたので声をかけてみる。 「さぁ……なんでも、領主様が直々に視察に来るらしいけど…」 「へぇ…」  この国では広大な国土を管理するのを、すべて貴族に任せてある。  これは領土と呼ばれ、他の国にも見られる制度だ。貴族は土地を任せられるという事が 自らのステータスになり、価値がある土地を任せられるとそれだけでかなりの地位にいるという事になる。  この国では領主となった貴族は、領土の中では王のように振る舞うことができる。税金から司法、区画整理から土地改革――そのすべてが貴族が定める。 貴族の器量で、裕福にも貧困にもなる。    だが最も危険な急所が、この制度には存在する。
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