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「はぁ、はぁ……」
街は絶望と混乱、悲鳴に包まれた。戦争という災厄は、ついにここまでやってきたのだ。
「くッ……」
窓から差し込む赤い光に照らし出された廊下を、一人の少女が歩いていた。
美しく、華奢で小柄な少女は、ゆっくりと、しかし確実に前に進んでいる。
「ぅッ……ぁ」
腹から込み上げる吐き気をなんとか我慢する。先ほど、人が焼ける臭いをたくさん嗅いだからだ。
戦火は、少女の思い出の詰まった街を破壊し、蹂躙していく。大切な人の死も、友達と過ごした毎日も――彼との出会いも、すべてが飲み込まれていく。
「先生ぇ……」
時折こぼれる彼の名前。少女は、彼を探して屋敷までやってきたのだ。
しかし、数ある部屋を探そうとせずに、彼女はある場所へと向かっていた。
と、その時だ――
強烈な爆音と振動が屋敷を襲った。
「きゃ……ッ」
衝撃で廊下へと叩きつけられる少女。さらに――窓のガラスが割れ、それらが少女へと降りかかった。
「ぁ、くッ」
身が切れ、白く簡素な服が血の色で染まっていく。
幸いにも急所は大丈夫だったが、それでも幼い少女の体力と気力を奪うには充分だ。
「……行かないと」
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