第一章 ありふれた日常

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「おはようございまーす」 俺は大きな声で挨拶しながら職場のドアを開けた。今日は憂鬱な当直勤務の朝だ。 勤務明けとその次の日が休みになるとはいえ、次の朝まで続く24時間勤務は辛い。 「おう陽輔、元気ねぇな。まーた彼女に振り回されたのか?」 背中から低い声がし、肩を叩かれた。 この声の主は 長山俊之(ながやま としゆき) 巡査部長 俺の直属の上司で、一緒に勤務する言わば相棒。首都圏の難関理系大学出身で警察官になった変わった人だ。 まだ27歳と若いながら頼りがいがあるし仕事もできる。 部長、と呼ぶ。あの大原部長と同じだ。そんなもんだ。 「いやいや部長ー!俺じゃなくて彼女の方がメロメロなんスからね」 いつもの軽口、いつもの朝が始まる。
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