病に勝った少女..弐話

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看護士たちは輝く目に少しの落胆を添え、結局は私を捕まえた。辺りを囲み、清潔な香りを漂わせる。 そして何とはなしに、一方的な会話が始まった。 「先生ったら、お昼くらい一緒に食べてくれたっていいわよねぇ?」 「そうよ。夜はオツキアイって感じでイヤ。」 「あの子の担当になってからよ。」 私にはおよそ出せない、延びた語尾と艶やかな中声。大学生ぐらいが聞けば目の色を変えそうなその声は、全て、暗に、私からの情報を掻き出すためのものだった。 担当医はモテている。昼食の誘いも多いのだろう。しかし、昼休憩時に彼の姿を院内で見た者はいないという。夜のオツキアイには顔を出すが、まさに社交辞令、といった体だとか。 極めつけが、私の親友だ。彼女が入院し、担当医がその地位を得た頃から、そういった行動が目立つようになったらしい。 「ね、あなたは何か知らない?」 私に聞かれても。反論しつつ、しかしながら、同じ女という種族。聞きたい気持ちがわからないわけではない。そして、親友がいない今ならば、言ってもいいのかもしれない。 私の耳にはタコが大量発生し、なおかつ馬に念仏が唱えられていたことをだ。 「あの子も、同じことを言っていました。」 「え?」 「夜は誘えませんが、せめてお昼を一緒に、と申し出たら、断られたと」 「嘘でしょう?」 「本当です。私の親友も、ナースの皆さんと同じ悩める乙女だったみたいです。」 つまり、今看護士から聞いた話を、親友からも聞かされていたというわけだ。幾度となく、途方もないほどに。私は話を聞く天才だと讃えられたこともある。自慢ではない。 看護士達は一様に安心したようで、私を解放してくれた。ようやく、帰宅できそうである。 長い長い昼休みだった。 本当に。 参話に続く。
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