悪夢

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不意に目が覚めた。 なんとなく。 目の前に見覚えのない天井。 そして、巨大なライト。 ドラマや映画で手術シーンの冒頭に出てくる“アレ”だ。 ・・何だろう、、? 覚めきらない頭のまま、体を起こそうと、、え?動か、、ない? 状況がわからないまま、横に向けた視線の先には 丈夫そうなベルトを巻かれた手首、、。 え?動かない?え、、? 「なんじゃこりぁっ!」 手足を動かそうとしても全く動かない! なんだ?なんだ?何が起きた? 「あっ?目ぇ覚めたぁ?」 不意に頭の上から声がした。 不釣り合いな「ロリなアニメ声」には覚えがあった。 「はぁせぇくぅらぁっ!テェメェかぁっ!」 「はぃはぁい!ユイちゃんですよぉ!」 普段なら、脱力させられるだけの声と態度だが、今回ばかりはっ! 「テェメェ!なんのつもりだぁ!」 「んーっ!いー声だねぇ!やっぱぁ、改造される直前のぉ、魂の叫びっていーねぇ!わざわざ麻酔を解いた価値あるねぇ」 をぃ!今、『改造』って言ったかぁ? 冗談じゃない!コイツの場合シャレじゃ済まない! バッという音と共に強烈な光が襲ってきた。 俺は反射的に眼を閉じた。 頭上からカチャカチャと金属が当たる音が近付いて来る。 やばい!やばい!情けないけど、本当に怖い時って、声もでないらしい。 ふっと光が和らいだのを感じ、恐る恐る眼を開けた。 強い光を遮る、黒い塊があった。 覗き込んでいる見覚えのある人影。 強い逆光のせいか、表情は全く読めない。 「だぁいじょーぶ!(たぶん)痛くないからぁ」 をぃ!ちょ、、な、なんだぁ?その小声の(たぶん)って!? 手にしたメスの照り返しに一瞬浮かんだアイツは確かに笑っていた。 無邪気なまでの満面の笑顔!! その瞬間、俺の中で張り詰めていた、“何か”が ぷっつりと切れた、、。 「やーめーろぉーっ!!」 目が、、覚めた今度は本当に。 目の前には、古文の吉川が苦り切った表情で立っていた。そこは、、教室だった。 「目は、覚めたか?」 「、、はい」 「じゃあ、座れ」 「いっ?!」 周りを見回す。 、、見晴らしが、、良かった。 寝ぼけて、叫んで立ち上がったらしい。 周囲の視線が、痛いっ! 「後で職員室な!」 「うぃーすっ」 吉川の有り難い説教のお誘いに、俺は応えるしかなかった。 そう、まだこの時はあれは“悪い夢”だと思っていたんだ。
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