〈彼女が今朝、スクランブル・エッグを作り始めた風景〉

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 それが有意義なモノであったと思えたなら僕は今、こんな事を考えていないはず。  僕も以前は普通にそれなりのコースを普通の人と同じスピードで普通に走ってたと思う。  そして周りの人間と同じように普通に2流の大学を卒業した。  そこからは、普通に働いて、普通な女性と恋をして、普通な結婚をして、最初の方は収入も少なくって安いアパートに二人で普通な苦労をして住んでたけど、その内、普通に二人ぐらい子供が出来て、上の子供が小学校に入る頃には普通に定年までのローンを組んでマイホームをを手に入れて、普通に子供たちが成長して行って、普通に色んな事が起こって、普通に歳をとって行って、普通に子供(両方とも女の子なんだけど)が結婚する時、式の最後に花束を貰って普通に泣くんだ。普通に定年になってお互い年老いた妻と普通に静かな暮らしをして、普通に娘たちが孫を連れてやってくることだってある。
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