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憧れ
『ヤ、ヤベェかも…』
少年は必死だった。
ボロボロの盗難スクーターで軽い気持ちで近所コンビニに行った帰りに、パトカーに追回されたのだった。
『ほら事故る前に停まれ』
ここらの管轄の警察はなんとも暴走族慣れしていて余裕タップリでぶつかる寸前まで煽って来る。『マジでヤベェ』
その頃の少年にはまだ運転技術の欠片も無かった。フラフラと蛇行を切るのが精一杯、
『原付を捨てて走ろうかな…。』
そんな事が頭をよぎっていた時ヒーローは現われた。
パトカーの横をスルリとすり抜け一台のCBXが少年に並んだ。
『オメェ面白そうな事やってんなぁ』
地元では知らない人が居ない程のM先輩だった。強さ、危なさ、優しさ、カッコ良さを併っていて持ち男女訪わず人気の有る人だった。
『俺が貰ってってやるわ』
M先輩はそう言うと急減速し、まずはパトカーに急ブレーキを踏ませた。『コラァ!、M!』
パトカーからは名指しのマイクが入った。M先輩は立ち上がり軽く尻を振って挑発した後、時速10キロを切るようなスピードで蛇行を繰り返した。
『オメェ早く行けって』そう言われた少年は頭をペコリと下げ目一杯原付のアクセルを回した。その後はCBXのコールとサイレンの音が遠くの住宅街へと消えて行った。
『超カッケー!』
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