【第一夜】沙羅葬呪

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満月の日は、銀の光で夜を照らす月光と、月光が造り出した闇影<かげ>が協奏し、人間と云う者は 月に神秘を感じる。   黄金色の月に見慣れてきたた人々は、赤や青の月に恐怖を抱き忌み祟り、またある時は魔力を信じて奉る。         ――――――――――――   今際、村の伝説を検証しようとこの闇ノ森に入り込んだ愚か者が二人。     伝説とは、この葉楼村(ようろうむら)に古(いにしえ)から語り継がれてきた伝承である。   月光が蒼白い満月の深夜0時、首筋を手で押え「償いの血捧げ奉らん。沙羅葬呪(さらそうじゅ)」と唱える。   すると、100年前に村を滅ぼし、50年前に消滅した吸血鬼一族の生き残りに会える…と。   その代わり、二度と現世には帰って来れない。   何故なら…      ―…償いの血捧げ奉る…―       溢れ出した恐怖は止まらなく、冗談半分で来た二人は今や、誰に向けての詫びか判らぬ謝罪の気持ちで一杯だった。     …だが、既に時遅し。     押えた左首筋には契約の証…   柘榴(ざくろ)色の刻印が浮かび上がっていた……──
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