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何処までも続く果て無き漆黒。
静寂の闇に包まれた森には二人の足音だけ。
支葵「…誰か来る…」
落ち葉や木の枝を踏むパキッ、パキッという規則正しい足音が聞こえる。
同時に、足音の主を演出するかのように、暗雲に隠れ森に闇を落としていた月が光を現した。
お互いを強く掴み慄(ふる)える二人の視線の先に現れたのは…
「「…狼…?」」
それは、見た事もない程に美麗な銀色の狼。
月光に照らされ蒼白く輝く輪郭…紅と紫のオッドアイが真直ぐに二人を捕らえた。
張り詰めていた緊張が一瞬解け、「なんだ…狼だったのか」と呟いたより早いか遅いか。
紅牙「可哀想に。お前たちも生け贄になるんだな」
悠斗「!!…し、喋った?!」
紅牙「狼が喋って悪いか?お前ら人間とは常識が違うんだよ」
数時間ぶりの対話。
闇からの解放。
二人が安堵した時。
「あなたの血を…
ください…」
女の声が聞こえた。
前後左右の検討がつかない、脳内に直接響いてくるような声。
今にも消えそうな儚い声だった。
紅牙「あいつはここ暫く生き血を吸ってないからな…貪られるぜ」
悠斗「生き血とか生け贄とか…何の話だよ…?」
紅牙「村の言い伝え、ちゃんと最後まで知ってて来たのか?」
支葵「最後って…」
償
っ
あ て
な く
た だ
の さ
血 い
で :
。
足音もなく
気配も無く
女は傍に居た。
支葵の背中にぴったりと寄り添い、耳元に囁きかけて。
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