【第一夜】沙羅葬呪

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飛び上がりたい気持ちだったが、それは叶わなかった。背中の少女が、押さえ込むように肩を掴んでいるのだ。   儚く切ない声と同一人物だとは信じがたい握力。 今にも消えそうな微弱の声で、暗示のような詩(うた)を繰り返す。        「血をください…    血をください…     償いの血を捧げよ」   氷の指先が首筋の刻印を撫でた。  吐息が耳元に在る。     沙羅「あなたの命を…… みんなと同じ、御霊になるの…」     牙が皮膚を貫き、痛みの目眩と快楽の恍惚感に見舞われた。       悠斗「ぁ…あぁ…」   紅牙「おっと…逃がさないぜ」   目の前で友が喰われ逝く様から、視線を反らせないまま後退りする悠斗に宣告する。     紅牙「もう、帰れないんだよ」   悠斗「い…嫌だ…ッ!俺は生きたい…!」     無我夢中で走り出した悠斗であったが、狼の俊足にかなう筈もなく。   飛び掛かった紅牙が鋭利な牙で首を咬み、地に伏せた。   ほんの、数秒の出来事。         沙羅「…足りない。」     数分ぶりに首から唇を離し、飽きた玩具を捨てるように干涸(ひから)びた人型の器を手放した。image=41325005.jpg
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