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星花は俯き震える体に力を入れた。覚悟はしていたのに恐怖と絶望が交差する。ギュッと目を綴じ唇を噛んだ。
昊志の父親は、ただ黙って聞いていたが心中は哀しみと淋しさで一杯だった。お国の為とはいえ、一人息子を失う哀しみは例えようのない壮絶なものだった。
母は涙を流しながらも真っ直ぐ息子を見つめ頷いた。戦争さえ起こらなかったら息子を失わずに済んだのに…母は昊志が生まれた時から今までを思い出し振り返る。
姉、綾子も泣いていた。幼い頃は、よくケンカもした。だが、たった1人の弟を戦争に奪われるのだ。綾子も俯き声を殺して泣いた。
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