(プロローグ)

5/5
前へ
/145ページ
次へ
『本当にもう会えないのか?』 「何十年かしたら会えるかも、でもこれが最後の別れになるかもしれないわ。」 『悠!』  父さんは俺ごと母さんを抱き締めていた。 「鋭志くん、後のことは頼みます。この子を幟麒を守って。」  そう俺を父さんに渡すと母さんはもう泣いていなかった。 『悠…俺はお前と一緒になれて幸せだったよ…絶対また会うぞ…』 「ありがとう…最後までごめんなさい。」 『もういいから後のことは何も心配するな。あいつによろしくな』 「はい。じゃあ行ってきます。さようなら。」  そう言うと母さんの姿は霧のように消えていた。 『ま…ま。まま!!うわ~ん』  あたりにこだまする俺の泣き声。これが母さんの最後の記憶だった…。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

282人が本棚に入れています
本棚に追加