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私に有無を言わさずに手をひいて教室の外に引っ張り出された。
ついた場所はめったに人が通らない体育倉庫裏。
「な ん で す か ?」
私は一言一言を区切って言った。
「……覚えてない?」
なにが?
私は答えるかわりに黙る。
「そのぶんじゃ覚えてないみたいだな」
私は素直に頷く。
「昔、君を助けたんだけど……」
助けた……?
「三年前……かな」
三年前ってことは十四歳か。
「君がカツアゲされてるとこ通りかかった俺がカツアゲしてた奴ぶっ倒したんだけど」
えーっと……ああ、あったね、そういや。
でもあのときの人はびっくりするくらい悪そうな人だったけどな。
髪はまぁまぁ長いくらいの金髪で前髪に真っ赤なメッシュ。顔はかっこいいけど、話しかけにくいタイプだったのを覚えてる。
てか、なんかおかしくない?
黒川様ったら、さっきとはえらく言葉遣いが悪いような?
いつの間に僕が俺になったの?
ていうかあのときのが黒川様なの?
私を助けてくれた人と一致しないんですけど。
「やっぱわかんねぇか。あんときから必死にイメチェンしたからな」
「なに言ってるわけ? なんで言葉遣い悪くなってんのよ」
私はつい叫んだ。
「これがほんとの俺。みんなの前ではイメージあげるためにまじの性格隠してんの。」
『あのときの違和感はこれかぁ!!』
正解がわかってうれしい反面、なぜ私には猫をかぶらないのかという疑問が生まれた。
「お前には知っといてもらいてぇから……」
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