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まなみはもう一度「ごめんね」と言い遠慮がちに微笑んだ。
「それにしても…水無月くんと捺っていつの間に知り合ったの?」
あ、そっか…まなみに言ってないんだっけ
知り合ったってほどじゃないけどさ
「えっとね…」
あれは、3週間くらい前のこと。
その日は降水確率100%の雨の日だった。
雨は朝から降っていて帰る頃にはどしゃ降り。
「俺の傘がない!」
そんな声が聞こえて帰ろうとしていたあたしは足を止めた。
こんな日に傘がないなんて…
御愁傷様だね
「は?朝さしてたじゃん」
「…盗まれた」
「うわ、可哀想に…」
うんほんと可哀想
少しだけ気になって声のするほうを覗けば1年の男子二人がいた。
「楓はこの雨の中傘もささずに濡れて帰るのか…」
「……傘入れて」
「やだね」
速攻で断られ頭を抱え込む傘がない男子。
と、いうか…
片方の子がいいよって言っても男の相合い傘…
この二人が相合い傘をするのを想像すると何だかおかしくて。
あたしは笑った。
「あ゙ーっどうしろって言うんだよ…」
……しょうがないなぁ
あたしはバックから折り畳み傘を出す。
「ねぇ、これ使っていいよ」
「へ…?」
間抜けな声と共に二人の視線があたしに向けられる。
あたしは困りきっていた男子の方に折り畳み傘を渡した。
「え…いいんですか?先輩…」
「うん、あたし傘あるし折り畳み使わないから…あ、ちょっと小さいかも知れないけど…」
「ありがとうございますーっ!」
今にも飛び付きそうな勢いで喜ぶ男子。
…ほんとに嬉しそう
そう、この時傘を渡したのが水無月だった。
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