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開かずの扉… そう呼ばれている扉は、けっこう存在していたりします… 葬儀屋時代、契約していた病院では解剖室の隣に、遺体を解剖するまで保存しておく保冷庫がありました。 遺体は一体づつ保冷され、扉も一つづつ付いていました。 その病院では二体分の保冷庫しかないはずなのに、なぜか扉は三つありました… 三つ目の扉は鍵などはなかったのですが、開けようとしても開きませんでした… ある日、私が解剖室に遺体を運ぼうと扉を開けた時、例の開かず扉からの中から 『キィ~…キィ~…』 ガラスを爪で擦るような音が… 私は気味が悪くなり同僚と顔を見合せた瞬間… 『どんっ』 扉を叩くような音が… 私達は怖くなり 急いで遺体を運び、解剖台の上に寝かせました… あとは解剖が終わってからの仕事なので、すぐさま会社に戻り、みんなに開かずの扉の話をしました… 話を聞いていた、1人が… 『看護士から聞いたんだけど、4~5年前に病院で亡くなった患者の家族が遺体を引き取らずに、夜逃げしてしまい そのまま遺体を病院で保存しているって言ってたよ…』 なんとも信じがたい話です… 保存と言っても、何年も保存できるものなのでしょうか… 防腐処理して冷蔵… または冷凍… 病院がそこまでするものでしょうか… しかし世の中には引き取り手のない遺体が存在するのも事実です… もしかしたら、その病院の開かずの扉の中に、本当に引き取り手のない遺体が眠っているのかもしれません… そして、その遺体は 火葬してもらって墓に入りたい一心で、私達に助けを求めたのかもしれません… 身内が亡くなっても、知らん顔をする人間が増えてきている 嫌な世の中になりつつあるのでしょうか… あなたは 家族の絆を大切にしていますか…
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