難病

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難病

この話は、お坊さんから聞いた話です… 母子家庭… 悲しい事に今では さほど珍しくはありません… 確かに子供の前で頻繁に夫婦喧嘩をしているよりは、別れて お互い別々の人生を歩き出したほうがいいのかもしれません… そんな母子家庭の一家に悲劇が訪れました… 一人息子の難病… 筋肉が固まってしまう病だったそうです… 原因も治療方法も解明されておらず、ただ死を待つのみ… その息子は、10歳で発病したそうです… だんだん 身体が動かせなくなり、15歳になる頃には完全に寝たきり状態になったそうです… お母さんは、毎日息子の世話をするだけの生活を送っていました… 息子は身体は動かせなくとも、首から上は正常で会話はできていました… そんな息子が18歳の誕生日に母に言った言葉… 『神様が 僕の身体を一度だけ動けるようにしてくれたなら…』 『僕は お母さんの肩を たたきたい…』 そう言ってニッコリ微笑んだそうです… そんな彼も19歳の誕生日を迎える前に亡くなったそうです… 彼は自分の寿命を感じ取っていたのでしょう… そして、彼は自分の病気の完治ではなく、お母さんへの親孝行を望んでいたのでしょう… 普通の生活を送れる人には 肩たたきなんて… と思うかもしれませんが、彼にとっては 一番の親孝行に感じていたのでしょう… 人間は自分の寿命を感じとったとき… または自分の死を受け入れたときに、本当の優しさが分かるのかもしれません… 人間は、その刻が訪れるまで本当の優しさがわからない生き物なのかもしれません…
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