六文銭

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故人に対する旅支度は家族全員で行います。 担当者は家族に、ひとつ ひとつ説明して、旅支度を進めていきます。 旅支度の最後に六文銭の説明をします。 そのときはおじいさんだったのですが… 『六文銭は仏様の弟子入りの試練を受けるときに使用します…』 『七日ごとに違う試練があり、初七日までは遺骨のそばにいて、二七日(14日)、三七日(21日)……七七日(49日)まで試練は続きます。』 『ひとつの試練に一文づつ使い、最後の一文が、三途の川の渡し賃とされてます…』 私は最後のお別れまでに六文銭と一緒に入れる写真や数珠を用意してくださいと説明しました… お通夜が終わり会場を片付けて、受付を片付けようとしたら、受付でお婆さんが片付けをしていました… 片付けは私がやるから大丈夫ですよと言うと、お婆さんはニコッとして立ち去りました… 翌日喪主が、受付に数珠は無かったか尋ねてきたので、『数珠は無かったけど、お婆さんがいたから、持っていったのでは…』と答えました… 喪主は身内にお婆さんはいないと… その数珠は故人のもので、六文銭と一緒に入れるつもりだったと言っていました… 喪主は香典の確認の際に受付に数珠を忘れたらしいのです… しかし棺の中のおじいさんを確認すると数珠が入ってました… 故人の奥さんは数年前に亡くなっているそうです… あのお婆さんは幽霊だったのでしょうか… 私は幽霊には見えなかったのですが… 近所のお婆さんが勝手にそんな事するとは思えません… あのお婆さんはいったい… やはり亡くなった奥さんだったのでしょうか… ※六文銭の意味は地域、宗派によって異なります。 今回は埼玉南部で一般的に言われている説明です。 葬儀屋マメ知識でした。
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