遊泳禁止区域

1/1
前へ
/144ページ
次へ

遊泳禁止区域

私の友人の親は茨城県に別荘をもっていました… 別荘といっても、平屋で部屋は8畳一間、築40年の古いものでした… そこは目の前が海で学生時代は、夏休みによく泊まりがけで行ったものでした… しかし、その場所は潮の流れが早く遊泳禁止の砂浜で毎年、数人が命を落としていました… 私が大丈夫だから、ここで泳ごうと言っても決して泳ごうとせず、わざわざ離れた海水浴場に行っていました… 別荘に宿泊した ある晩、友人はその理由を語り始めました… 友人は目の前の海で兄貴を亡くしていたのでした… 私は高校からの知り合いで知らなかったのですが、その兄貴は、とても泳ぎが上手く、学校代表で大会に出るほどだったそうです… 数年前に、そこで兄貴と泳いでいたら、突然兄貴が必死の形相で岸に向かって泳ぎだし、そのまま海に引きずり込まれるように沈んでいったそうです… それが兄貴の最後の姿で、翌日水死体で発見されたそうです… 家族が遺体の確認をすると兄貴の両足首に、まるで手で捕まれてできたような、赤いアザがついていたそうです… それ以来、目の前の海には入らなくなったそうです… 友人は兄貴が一人で泳いでいたのを確認しています… 『ここの海には絶対に何かいる…』 『兄貴は最後に俺にそう言いたかったんだと思う…』 『なにかに海の底に引きずり込まれたんだよ…』 そう言って哀しそうな顔していました… 身内が目の前で亡くなれば怖くなるのは当然ですが、私も葬儀屋を経験してからは遊泳禁止の海には何かがいると思います… たびたび水難事故の起きる遊泳禁止の海には… なにかがいます… 友人の兄貴は海でなにかを見たのでしょう… そのとき友人も見ていたら… もしかしたら…
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24069人が本棚に入れています
本棚に追加