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今日もくだらないパーティー
出席者に挨拶をするだけの退屈な時間
「疲れたな…」
一馬は秘書に席を外すと一言告げると、いつもの癖で夜の遊園地に足を運んだ
観覧車の下のベンチに腰掛け、夜空を見上げる
「もうこんな時間か…」
一馬は立ち上がり、観覧車を見る
「姫?」
一馬は無意識に歩み寄る
(あっ…)
一馬の気配に気付き、長い髪を揺らして振り返る
りおに少しだけ似た女性は、涙をためていた
「どうしました?」
(いえ…あの…)
何か訳がありそうだ
「私でよければ話を聞きますが」
女性は少しためらい、話し出した
(今日は、亡くなった彼の命日なんです)
「それは辛いですね」
(この観覧車は、彼と初めてのデートで乗りました)
一馬は黙って聞いていた
(でも、いつまでも想っていても無駄だと…
だから、最後に観覧車に乗ってこれからは前を向いて歩いて行こうと…
でも、なかなか乗る勇気が出なくて)
「あなたは彼を忘れたいのですか?」
(違います、忘れたりはしません)
(でも…待っていても戻らない…私も前に進めずに立ち止まったまま)
「前に進みたいのですか?」
(進みたいと思ってはいます)
すると、閉園を告げるメロディーが流れた
(あっ、もう行かないと)
「あなたに付き合いますよ」
(えっ?)
「観覧車に乗りましょう」
(でも、閉園…)
一馬は気にせず観覧車に向かう
「乗りますよ」
女性も観覧車に向かう
そして二人を乗せた観覧車がゆっくり空に向かう
一馬は携帯をとりだし
電話をかけた
「私だ、園内の照明はまだ消すな」
そして携帯をしまった
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