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「簡単な話。表の日常は彼の中。
裏の日常はこの世界。扉の向こうは全くの穴。」
「…穴って?」
「穴の奥を特別な場所と思うかは主観の問題だ。
僕達にとっては穴以外の概念はない。」
「…私はどうすれば?」
「君の願いだ。表の世界を望むのなら
白うさぎを追い日常を取り返しに行けばいい。」
「…取り返す?」
「運命は動き出した。取り返せるかどうかは君次第だ。」
「ここに残るのならここが私の日常になるの?ここには何があるの?」
「その通り。そしてここには何もない。
君という概念が存在するだけ。」
「…そんな。」
「何を迷うの?どちらにしても同じようなもんだろう?」
「私はあなたを特別なものだと思う。
私はずっと願っていたんだ。
この先に行けば変われる気がする…。」
「それは君次第。」
猫は調子を乱さず淡々と話した。
私は混乱する頭で搾り出せた思いをそのまま口にした。
――――――そして
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