兎の穴

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私は扉のノブを回した。 「…あれ?開かない…。」 「行くんだね?その扉には鍵が掛かっている。」 「鍵?!じゃあどうすれば…?」 「君は鍵を手にしている。」 「…私は何も持ってないけど…。」 「行く前にいくつか伝えたいことがある。」 猫は鍵の話しは無視してそう言うと私の名前を尋ねてきた。 「…私?えっと…。」 「裏の世界での君の名前を聞いているんだ。」 …………………裏? 表の私の名前は美嘉だけれどここにいるのは裏の私。 「もしかして好きに名乗っていいの…?」 「裏の世界での君の名前を聞いているんだ。」 猫は同じことを言った。 それは私の問いを肯定するのと裏の存在を強調するように。 「…アリス。」 「やぁ。アリス?」 私は今の状況が不思議の国のアリスと重なる気がした。 「ではアリス。注意事項だ。」
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