マリアと柩

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少し立ちくらみがした。 辺りを見回すとこの教会は酷く年季が入っているように見えた。 造りはさほど大きくない。 机やイスや壁に至るまでかなり劣化している。 牧師が立つ教壇の横で佇む私に 眩しい程カラフルな光が注がれていることに気づく。 私は後を振り返った。 「…あっ。」 思わず息を呑む。 ステンドグラスに美しく柔和なマリアが描かれていた。 その両腕の中には柩が抱えられている。 そして調度柩からの光が当たる場所に私はいたのだ。 「おぃっ!こら。」 ―――――――?! 針ネズミは私の直ぐ後まで来ていた。 「お前は誰だって聞いてるだろっ!」 「えっと…。私はアリス…。」 「へぇ…。聞いたことない名前だな。 それに変わった服を着てるしなぁ。」 ………………服? そう言えば私はパジャマだった。 パジャマでこんな場所にいると意識したら少し恥ずかしくなった。 「あなたは…?」 「ん!?オレは針ネズミのジャンだ!」 「ジャン?」 「そうだ!」 「あなたはここで何をしてるの?」
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