怪奇熱

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お風呂を上がり午後10時を回った。 私はそろそろ眠りに入ろうと布団に潜り込んだとこだった。 瞼を閉じると目の前からは光が消える。 一面に広がる闇の向こうから睡魔が現れるのを静かに待つ。 やがて頭の奥が鈍く揺らいで睡眠という名の海原へ落ちる。 私は深くて暗い海の底へ沈んでいく途中に白い何かを見た。 それが何であったかは分からない。 しかしそれは不確かながらも忽然と私の前に現れたのだ。 こんなのは初めてだ。 私の睡眠という日課にはこんなものは予想の範囲外だ。 これが私の日常という確固たる軸に入った初めての亀裂だった。
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