怪奇熱

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そう私が海の途中で見た白い物体とはうさぎだった。 そして今馬乗りになる形で私を凝視しているのは紛れもなく同じうさぎだ。 その白いうさぎは瞳を真っ赤に充血させて 何が悲しいのか赤い涙のようなものをポタポタと流している。 その体はまるで人間のように大きい。 彼の腕は私より長く太い。 そして彼の太い両の腕は私の首をきつく締め上げている。 私は声も出せずにその様子を眺めている。 何も考えられずただゆっくりと意識が遠のく。 そんな微かな朦朧の刹那に私には思うことがあった。 ただ…………………………… …どうして彼は泣いてるの? ―――――プツン――――― 遂に意識が途絶えた。
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