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帰り道の浮かれようはどうだろう。
僕はモテる方ではなかったし、いままで女の子と付き合ったこともない。
もちろん好きな娘はいたけど、本気かどうか怪しいものだった。
笑わないで欲しい。
そういう僕らもちゃんといるのだから。
大学に入って、親のスネかじって一人暮らし初めて、夢だったバイクの免許も取った。
バイトして、欲しかったガンマも買った。
一人でいる時間が長いと、つい彼女のこと考えていた。
恋したのかなぁ~
って、おぼろげに思った。
耕次に話てみたら、思いっきり笑われた。
一瞬やな奴だと思ったけど、応援してくれた。
それが嬉しかった。
帰り道、いつもの本屋に寄る。
「木戸くん、今日は早いね」
ここの店長さんは良く話してくれて、いい友達になっていた。
「珈琲のんで行くやろ」
「ありがとうございます。」
レジの裏の小さなスペースにテーブルとイスがある。
いつもここで時間つぶして帰るのが日課になっていた。
今日は一人先客がいた。
近くの高校のセーラー服だ。
「彼女は?」
店長さんに聞くと、
「悩み多き高校生、よく来る娘だから話してて」
「帰らせなくていいの?」
店長さんは手を振りながらレジに向かっていた。
「どうかしたの?」
「いえ、なんでもないんです。」
しばらく会話もなく珈琲を飲んでいると、彼女から話かけてきた。
「バイクなんですか?」
「うん」
「寒くないですか?」
「寒いよ」
僕はケラケラ笑っていた。
「いいなぁ、自由で」
「受験勉強疲れ?」
「そんなとこです。」
なにげない話が続いた。
彼女は毎日が楽しくないらしく、塾をサボって時間つぶしているらしい。
家はここの近くで、兄が一人。
学校でも楽しく話してはいるけど、なにかもの足らない。
「学校って、なんなんでしょうね」
わからなくもない。
「僕は毎日大学行くの楽しいよ。友達も先生もね」
彼女が帰ったあと、店長さんとしばらく話して、部屋に帰り着いた。
帰ってから、なぜか高校生の彼女のこと考えていた。
布団をかぶるとき、少し素子さん思い出して、そしてまた高校生の彼女のこと考えていた。
名前すら知らないのに…
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