竜一の幸運

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翌日、大学のゼミで素子さんの隣になった。 すでにゼミどころではない。 まあ、先生がくだけた方で、半分雑談なところに救われたこともあった。 学食で耕次と珈琲を飲んでいると、ゼミで一緒の美加子さんが話しかけてきた。 「ねぇ、木戸くんってフリー?」 「彼女は居ねぇよ」 耕次が入ってくる。 「こらこら」 「好きな娘いるの?」 「あぁ、若干一名」 またも耕次が話す。 「こ、こらこら」 「ふ~ん、わかった」 「美加子、聞き捨てならねぇなぁ」 耕次がニヤニヤしながら美加子さんをみている。 「あの~本人ここなんですけど…」 「わかった」 美加子さんはパタパタとみんなの所へ駆け戻っていった。 耕次はニヤニヤと僕を見て、 「なんか動きそうだな」 「どこ見て話してる」 僕らは二人で笑っていた。   帰り際、ゼミの美加子さんと典子さんに呼ばれて、霞 加奈子にあった。 「どしたの」 「なんでもない…んだけど」 加奈子はクラスで一番小さな娘で、細い体つきをしている。 よく話す娘で明るくてかわいい娘だ。 しばらく友達の話をしながら、笑っていたのに、急に黙ってしまった。 まさか、 いや、まさかね。 「あたしと…付き合って…」 かぁ~っと血が登った。 返事が出来ない。 どうしよう。そんなこと考えても見なかった。 確かにかわいい娘だし、気も合う。 「少し考えていい?」 なぜだか、昨日の高校生が頭に浮かんだ。 「ぅん」 僕は加奈子さんを傷つけないようにと思っていた。 断ればいいのにって自分にいいながら部屋を出た。 加奈子さんの一生懸命さに心うたれてしまった。 僕は何に一生懸命になれるんだろう。 加奈子さんは、こんな僕のどこがいいんだろう。   気がつくと、いつもの本屋でガンマにまたがったまま、ただメーターを見ていた。
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