竜一の幸運

8/10
前へ
/90ページ
次へ
「土曜日ツーリングの相手いなくてね、行かない?」 あ、自然に言えた。 「行っていい?」 「寒くない格好できて、メットとグラブはあるから」 「嬉しい、行く」 「ありがとう。じゃあ迎え行く」 「うん、絶対だよ」 あっさりと決まった。 なんだ、なに緊張してたんだ僕は… すごい嬉しくなった。 帰り道はいつもより早く軽やかに走っていた。   下宿に着くと、美津子ちゃんが居た。 「あれ?どうした?」 「今日塾休みだから遊びに…きたの」 「お茶しかないよ、じゃあ、寄ってく?」 「うん」 少し浮かれていたので何気に誘ってしまった。 「散らかってるよ、完璧に」 「いいよ、」 この部屋に入る女の子は彼女が初めてだったな…って思いながら、つい制服のスカートをみてしまった。 「結構広いんだ」 雑誌とノートを片付けてしまうと、彼女はパイプベッドに腰掛けた。 「たまには早く帰んないとお母さん心配するんじゃ?」 「お母さんお仕事だから、帰っても暇なの」 「そうか」 「あれみせて」 「いいよ」 僕は予備のヘルメットと冬グラブを出して、掃除しながら話していた。 「どっか行くの?」 「ツーリング」 「いいな~いつか連れて行ってよ」 「今度ね」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加