🍸ブルーグラスの破片💥

『結局、終わりを選んだ』

　これ以上、のばしたくなかった。現実を彼の言葉によって認識したくない。

　ポンなんて、最初はふざけた呼び名だと思った。こんなシリアスな話のときにさらりと流せるくらい、彼が口にして私はそれを聞くのに慣れた。彼の呼び名は彼が出会ったその日に自分からそう呼ぶように言ってきた。呼び名の理由は聞いても教えてくれない。

「ポンは望んでいないでしょう？」

「なんでだろうね、はじめはあなたをただ救いたくてそばにいただけかもしれない。なのに、あなたは人を離れなくさせる何かを持っているわ。それはメガネの奥にある、見守ってくれるような瞳かもしれないし、線の上からはずれないように導くための言葉を吐く口かもしれない」

　ウイがワインに口をつけた。なかなか甘口だよ、と言う。私も口に香りを残す程度に含む。

「ポンが偶然好いてくれただけだよ。僕はそんなすごい人間じゃない。現に大事な人を苦しめて傷つけて、結局救えなかった」