🍸ブルーグラスの破片💥

『幸せな時』

　ウイが私の手を引く。小道に入ると両端に竹や、何の木かわからないものが生えている。生えている竹と竹のバランス、花や草木の量、全てがこの上品な空間を作り出す要素となっている気がした。
「ウイ、本当にここ？　なんか緊張しちゃうよ」
「少し歩けば、入り口見えてくるよ」
　ウイの手が頼りがいある手に感じて、つなぐ手に力をこめる。砂利の中に埋まった同じ大きさの薄い丸い岩の上いつもより少し広めの歩幅で歩いた。

　使用中を示す札を表にすると、プライベートルームになった。自分の家より少し広めの浴槽は薄い茶色で、シャワーを浴びるところは岩が敷き詰められていて灰色になっている。脱衣所にある扉を開けると、その色たちとふわっと香る檜、暖かい湯気が私たち二人を出迎えた。
「うわ、落ち着く香り」
　私は素直に喜んだ。
「檜は癒しの効果があるね。きっとポンも気に入るよ」
　奥さんもこうして彼に温泉に連れてきてもらい、檜の香りや温泉の効果に酔いしれたのかもしれないと、ウイの言い方は私にそう想像させた。