🍸ブルーグラスの破片💥

『幸せな時』

「早く入ろう」
　自分の悲しい脳を止めるために温泉に入るよう促した。四つの脱衣かごの上段の一つに、スパスパと脱いでいった服を適当に畳み入れ、一番上にタオルでそれらを隠すように置いた。ウイは素早い私と対照的にゆっくりと脱いでいく。
「先入っているね」
　お飾り程度に体に張り付いていた手ぬぐいをまだ冷たいシャワーで濡らし、丁寧に洗った。シャワーのお湯が温かくなると同時に彼が入ってくる。泡を流し、先に湯船に浸かった。檜は少しぬるついたが、なんだか優しかった。お湯が体をじんわりと温めていく。ウイが体を洗っている間、手ぬぐいを排水溝近くでしぼったり、手でお湯をすくってみたりした。早くいつものように後ろから抱っこする形で一緒に入りたいと思っていた。じらすように彼はゆっくり。
「気持ちいいよ」
「今入るよ。広いからいいね。ポンも普段ゆっくりできないだろうし、ね」
　ウイが入ってくる。お湯が少しこぼれる。彼は、私を抱きかかえるようにお湯に浸かった。
「風邪ひくよ」
「あ、ありがとう」
　濡れないようにアップにしている髪を気遣っていたら、肩がでていたらしい。ウイは、お湯を肩にゆっくりかけてくれた。