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「ねぇ、斉木。澁澤さんてどう思う?」
「何だよ、突然。どうって言われてもな‥、俺は男だし分からねぇよ。どうして?」
「実はさ、昨日の休みに誘われて一緒にご飯食べに行ったんだけど‥」
イタリアンの店を出た後、わたしは夜景を見に行こうという澁澤の誘いを、適当な言い訳で断り、家の前まで送ってもらった。
別れ際、「次はいつ会える?」と尋ねられたけど、曖昧に濁すしかなかった。
澁澤が好意を抱いてくれているのは伝わってきたが、その気持ちに応えることはできないから。
部屋に入ってひとりになった瞬間、何ともいえない開放感があった。
急にぐったりきて、ソファに倒れ込んだまま寝入ってしまったのも、受け入れられない根拠としては充分だと思う。
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