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澁澤光輝と知り合ったのは、一昨年前の秋。
彼は当時わたしがバイトしていた居酒屋の常連客だった。
いつも数人と連立って来るのだが、たまに一人でやってきてはカウンターに座り、生ビールを二杯だけ飲んで帰って行く。
「倉持が入る前はひとりでくることなんてなかったのに。気に入られたね」
同い年だが、バイト歴はわたしよりかなり長い斉木僚太が冷やかし紛れに教えてくれた。
澁澤は見た目に若く、二十六歳にはとても見えない。
せいぜい二十歳やそこら。
童顔という程でもないから、全体的な雰囲気がそう見せるのだと思う。
Tシャツやジーンズのカジュアルな服装に、短髪の毛先を無造作に散らした澁澤は、大学生と偽っても疑われはしないだろう。
澁澤が「紫織ちゃん」と名前で呼ぶのは、従業員の中でわたしだけだったけど、別に嫌な気はしなかった。
紳士な態度で接してくれる彼に対して、わたしはむしろ好意さえ抱いていたから。
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