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そんな中で、女は顔色ひとつ変えず、ただ、その光の花の傍らに座っている。
幽閉されてどれだけ経ったかもわからない時間の間、ずっと。
それに対し、使い魔の黒猫は落ち着かなくて仕方ない。
「ねぇ~。ご主人~」
「なんだ?」
「退屈」
「仕方あるまい。異次元牢の中に遊具は無いからな」
「そうじゃなくてさぁ~。ご主人は平気なの?こんなんで」
「別に。慣れた」
どこまでも素っ気ない主人の言葉に、黒猫はうなだれ、見えない床にへたり込む。
「こんなんじゃカラダがなまっちゃうよぅ」
「ならそこいらを走って来ればいい。ここは異次元だからな。どこをどう走ってもいつかはここに戻ってくるぞ」
女の言葉に猫は落としていた肩ごと顔を持ち上げる。
「だぁかぁらぁ!そんな異常な異次元生活で満足なのかって聞いてるの!?」
「いいじゃないか。ルームランナーを買う必要がないぞ」
「そういう問題じゃないやん!こんな時間感覚も狂っちゃうような場所なんだよ!?」
「時間感覚ねぇ。なら金曜日の夕食はカレーにしてもらうか?」
「………っ!」
黒猫は言葉を失い、深い溜め息と共に再度うなだれた。
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