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「赤子…?
神が捨てたのか?
…いや、預かれって言ってたからそれはないか…」
よくわからなくなったが俺は赤子を両手で抱いた。
頬はリンゴのように少し赤みかかった色。
健康そうな寝顔であった。
「っと、急がなきゃな…」
両手に赤子を抱えて、急いで倒れたバイクに戻って起こすと、引いて走った。
(神とはいえ…
まだ赤子だ…)
赤子が風邪を引かないように、俺は体を丸く曲げて、雨が当たらないように気を遣った。
俺が一人で住んでいるマンションは少し新しめなマンションだ。
親の金と狩りの資金で生活をしている。
俺は急ぎ足でバイクを駐輪場に止めて、エレベーターで六階にまで上がった。
(肌が冷たい…
冷えすぎたか…)
赤子の頬を手の甲で軽く触れた。
顔が冷たく、あの赤い頬も今では見られなくなっていた。
(早く着け…)
俺はいつの間にかエレベーターの中で地団駄を踏んでいた。
ガチャ!
部屋の鍵を開けて急いで中に入った。
「タオル…!」
タンスからタオルを有るだけ引きずり出した。
子供のあやし方なんて知る余地もない。
ましてや、神の子供じゃ、ふつうの子供達とはまったく違うのかもしれない。
…だが、怖がる必要なんてなかった。
今、体を拭いて上げているのが、とても非力で誰かがいないと死んでしまうほど
まだまだ、小さな命だったからだ。
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