一ノ章[神を狩る者]

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 夜は更け。  辺りの街灯だけが、光をくれていた。 「はぁ…はぁ…はぁ…」  その真っ暗闇の住宅街を、俺はひたすらに逃げている。 「…今日は…ことごとく、…ついてないなぁ…」    負傷を負った右腕を手で覆い、血を止めながら、俺は苦い顔をして後ろをゆっくりと向いた。  そこには無数の黒光りする虫が形を成しては崩れ、また形を作りながら、俺の後を追い回っていた。   「まったく…質の悪い奴だ…」  俺は住宅街の中から錆び付いた工場に急いで入った。  虫の集合体もつられて入ってきた。   (作戦が変更になったけど… …まあ、いいか)  俺は工場の中に入ると、走りながらあれを探した。   「……あった!」  虫が迫り来る中、俺は酒の入った瓶を走りながら手に取った。 「ここが酒の製造工場でよかった…」  俺はは片手に持てるだけの酒瓶を集めた。  そして、虫達に襲われながらも、工場の中央に開いた広いスペースに逃げ込んだ。 「はぁはぁ…あとは…」  俺は目の前に酒瓶を投げつけると、その上をジャンプして飛び越し、向こう側に着地。ポケットからおまけの小さなマッチを取り出し、火をつけた。    その時、虫達は群をなし、俺に向かって襲いかかってきた。 「これでも…くらっとけ…!」  俺は虫の群が酒の上に入るタイミングを見計らって、火のついたマッチを酒に向かって投げつけた。  マッチの炎は瞬く間に酒に燃え広がり、虫達に襲いかかった。    数十分間炎は燃え続け、虫達は黒いからだをさらに黒くし、まったく動かなくなった。  …俺は胸ポケットから煙草を取り出し、炎に歩み寄ると、煙草に火をつけた。   「……あばよ。[神]…」
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