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夜は更け。
辺りの街灯だけが、光をくれていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
その真っ暗闇の住宅街を、俺はひたすらに逃げている。
「…今日は…ことごとく、…ついてないなぁ…」
負傷を負った右腕を手で覆い、血を止めながら、俺は苦い顔をして後ろをゆっくりと向いた。
そこには無数の黒光りする虫が形を成しては崩れ、また形を作りながら、俺の後を追い回っていた。
「まったく…質の悪い奴だ…」
俺は住宅街の中から錆び付いた工場に急いで入った。
虫の集合体もつられて入ってきた。
(作戦が変更になったけど…
…まあ、いいか)
俺は工場の中に入ると、走りながらあれを探した。
「……あった!」
虫が迫り来る中、俺は酒の入った瓶を走りながら手に取った。
「ここが酒の製造工場でよかった…」
俺はは片手に持てるだけの酒瓶を集めた。
そして、虫達に襲われながらも、工場の中央に開いた広いスペースに逃げ込んだ。
「はぁはぁ…あとは…」
俺は目の前に酒瓶を投げつけると、その上をジャンプして飛び越し、向こう側に着地。ポケットからおまけの小さなマッチを取り出し、火をつけた。
その時、虫達は群をなし、俺に向かって襲いかかってきた。
「これでも…くらっとけ…!」
俺は虫の群が酒の上に入るタイミングを見計らって、火のついたマッチを酒に向かって投げつけた。
マッチの炎は瞬く間に酒に燃え広がり、虫達に襲いかかった。
数十分間炎は燃え続け、虫達は黒いからだをさらに黒くし、まったく動かなくなった。
…俺は胸ポケットから煙草を取り出し、炎に歩み寄ると、煙草に火をつけた。
「……あばよ。[神]…」
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