3

1/20
367人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ

3

「あんた荷物全然作ってないじゃない!」 家に帰ると早々、母親が目くじらを立てながらかけてきた。 「いいよ、殆ど捨てるつもりだし」 面倒でそう言うと、僕は逃げる速度で階段をかけ上がり、自室へと向かった。 「何言ってんのあんたはー!ちゃんとやってちょうだいよー?」 「はいはい」 扉を閉めながら、適当に返事をすると、僕は制服姿のままでベッドに倒れ込んだ。 まだ頭がぼんやりしていて、夢の中みたいだ。 溜め息を吐きながら、僕はぼんやりとついさっきまでのことを思い出しては、頭の芯からかぁっと熱くなるのを感じる。 先生が告白を聴いてくれた事実。そして、あの約束……。 僕は枕に顔を埋めた。 今更に恥ずかしくて、妙に擽ったい。 好きだと言われたわけじゃない。でも、優しくされて、ありがとうと言われて――やっぱり嬉しい。 ベッドから起き上がり、僕は机に向かうと、筆を取った。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!