第一章:衝動

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耳鳴りが響く。 どこから聴こえてくるのかは分からないが、それは確かに葵(アオイ)へ向かって来ているようだった。 無機質な、機械音のような、音だった。 「はぁ……」 机に肘を付き、葵は窓の外を眺め、ため息を一つこぼした。 まるで、真空の箱の中にいるようだった。 そこへ自身の声を投じてみると、少しだけ歪が生じる。 もう、慣れていた。 暮も押し迫った十二月、町中がクリスマスカラーに彩られ、どこか浮き足立っていた。 今日は昼過ぎから一気に気温が低下したので、今夜辺り雪が降るかもしれない。 ホワイトクリスマス、か。
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