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「なんで…なんであなたはそんなに自分勝手なんですか?私をお父さんに押し付けて…」
そこまで言って七海は涙でそれ以上しゃべる事が出来なくなってしまった。彩香はたまらず七海の頭を撫でた。
「私もさぁ~相当あの時はテンパってたんだよねぇ…。別に今更母親ぶる気はないけどさ。両親の葬式もなんか顔向け出来なくてさ」
そう言って少し苦笑いをして
「そーだ七海!一緒に暮らそうか?どうせ武ちゃんの所には行かないんだろうし。ね?決まりぃ♪」
この人のこの脳天気ぶりはきっと演技だ。人の気持ちに敏感な七海はそう思った。自分もずっといい子の演技をしてたからよくわかる。そして…自分に凄い似てるなって思った。
「わかった…一緒に暮らす。」
七海はそう答えていた。なんとなく危うい感じのするこの人を、なんとなくほっとけなかった。
「やったぁ♪このマンション広すぎるからさ。一人は寂しかったんだよね~」
ニコニコしながら彩香は無邪気にはしゃいでいた。
このマンションは彩香がキャバをしていた時に知り合った、もう初老の金持ちの男に貰い受けた物だった。
その人は何故か彩香を気に入ってくれて、毎日通ってくれた。男は妙に金持ちで、その男のおかげて彩香はNo.1にまで登り詰めた。
まだ入店まもなかった彩香に一位の座を奪われた愛は、彩香に散々嫌がらせをした。それでも彩香は店を辞めなかった。
ある日その男から彩香の携帯に電話がきた。彩香は同伴の誘いだと思ってすぐ電話にでた。
「もしもし?」
「彩香…すぐ家に来てくれないか?住所は今からメールで教えるから。」
それだけ言うと、男は電話を切ってしまった。彩香は一瞬行くのを辞めようか?とも思ったが、メールで送られてきた住所を頼りに男の家に行った。
チャイムを押しても返事がないので、ドアを押して見ると
カチャ
と言う音とともに玄関のドアは開いた。
彩香は玄関から声をかけたが返事はなかった。しょうがなく部屋の中まで入って行くと、男はベットの上で休んでいた。彩香は呼び出しておいてなんだよ!って思いながらも、そのうち起きるだろうと思ってソファーに腰をおろした。そしていつの間にか男の部屋で寝てしまっていた。
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