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彩香のマンションは電車で一時間ほどの場所にあった。駅を降りてからはタクシーに乗換えて10分ほどで到着した。
彩香の住んでる場所はセキュリティも万全な高級マンションで、七海が入口で入れずに迷っていると
「あぁ。このマンションはそこで部屋番号を押して、中の人に開けてもらわないと入れないよ!」
と清掃の人が教えてくれた。七海は住所を見ながら、彩香の部屋番号を押した。するとインターフォンから
「どなたですか~」
と気怠そうな女の声がした。
「藤崎 七海です。話があってきました」
そう言うと
「開けるから中入っといで~」
とやる気のなさそうな声で彩香が言った。
七海はドアの前で深呼吸してから、チャイムを押した。すると彩香は何も言わずにドアのロックを解除した。
七海はドアを開けて、玄関に入った。中に入ると中から金髪で派手な化粧をした彩香が出て来た。
「七海ちゃんひさしぶりだねぇ♪元気だった?」
彩香は軽い感じで七海に言った。本当は七海が尋ねて来てくれた事が凄く嬉しかった。すぐにでも抱き締めたかったけど彩香はいままで、どんな事があってもヘラヘラと笑いながら生きて来た。
自分の弱みや本心を悟られてはいけない。武史と別れてから彩香は一度も人前で泣く事はなかった。
七海にはそのヘラヘラした態度が許せなかった。しばらく言葉が見つからずに、玄関で立ち尽くしていると彩香が
「まぁあがんなよ!コーヒー入れるからさ」
そう言って奥の部屋に入っていった。仕方なく七海も後に続いた。
彩香がコーヒーを入れてる間に、七海は部屋の中を見回していた。高そうな絵画や美術品が置いてあって、部屋の隅に無造作に置いてあるカバンはすべてブランド品だった。
「何キョロキョロしてんの?早く座りなよ」
笑いながら彩香は言った。七海は近くのソファーに腰を降ろした。
「んでどんな用があって来たの?」
彩香が言うと
「私の祖父母…あなたにとっては両親が相次いで死んだんです。」
「あぁ。その話なら武ちゃんから聞いてたよ。死んだすぐ後にね!」
「聞いていたならなんで…なんで自分の両親のお葬式にも顔を出さないんですか?」
あまりにもヘラヘラとやる気のなさそうな彩香に、七海は本当に頭にきて産まれて始めて大声で怒鳴っていた。
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