〈零〉

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涙で霞んだ目でメールを打つのは大変で、やっと打ち終わったのは30分も経った後だった。 後は送信ボタンを押せば終わる。 なのに、その最後のボタンが押せず更に1時間が過ぎようとしている。 けれど、やはり決心がつかず、保存をして携帯を閉じた。 …………ザァ---- ベッドに横になっていると雨が降り始めた。。 その音を聞いていると何故か無性に外に出たくなった。 そうしたら、何時の間にか彼女は携帯を持って靴も履かずに外へと出ていた。 外へと出ると、辺りは物凄い雨で視界は最悪だった。 すれ違う人達は一様に傘を持ち、あるいはカッパを着て足早に通り過ぎて行く。 バケツをひっくり返したような雨の中、1人傘も差さず、裸足で歩いていく。 丁度交差点に差し掛かった時、急に目眩がした。目の前の歩行者信号は赤になったばかり、車道側に体は導かれるように傾いて行く。 ぼんやりした頭でも分かる。自分がこの後どうなるかぐらい。 そして…---- キキキイイイィィ!! 耳障りに響くブレーキ音。次いで、 ドンッ!!!! 何かがぶつかる音がした。 最後に見たのはあの人の優しい笑顔だった。
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