〈壱〉

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 目を開く。やはり、真っ白な世界────  しかし、今度は陰影がある白。 「目が覚めた?」  すぐ傍から奏君の声がする。  あぁ、まだ自分は生きているんだ。  嬉しい気持ちと悲しい気持ちがない交ぜになりながら、声の方へ視線を向けた。  だが、そこには頭から黒いローブを被った人がいた。  そして背中には、対照的な純白の羽根があった。 「……?」  誰?  奏君じゃない。 「俺はカイ、天使だ。そして君は見習い天使となった」 察した様にローブの男、カイは言葉少なに言った。 「今は何も考えなくていい。誤って『消滅の間』に出てしまったせいで消滅しかけている。もう少し眠りなさい。精神体が持たない」  言われて気付いた。体が重い、指一本動かすことが出来ない。  すっと伸びてきた手が目元を覆う。 「眠りなさい」 その言葉を聞いたのを最後に私はまた意識を手放した…──── .
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