始まり

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目に入ったのは窓枠に座っている黒猫だった。 その黒猫は綺麗な金色の瞳をしていて艶やかな真っ黒い毛並みだ。猫が小さくニャーオと一声鳴く。 「どうしたの、あんた。迷い込んだの?」 窓枠に居る黒猫に近付くとひょいと抱き上げる。 「名前は何て言うのかなぁ…首輪にも書いてない、か」 透明な水晶で出来た鈴が付いた赤い首輪にはどこにも名前なんて書いていなかった。困ったあたしはどうしたものかと悩んでいだ良い案は浮かばず仕方なさそうに眉尻を下げて笑みを猫に向ける。 「仕方ないね、一緒に暮らそうか。あたししか居ないけどよろしくね?」 猫はまたニャーオと一声鳴く。あたしは猫を床に降ろし、時計をチラ見した。 7:15 もう用意しないと遅刻してしまう。あたしは慌てて紺のブレザーの制服に身を包むと家を出た。
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