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アリス、おいでよ、アリス キミにとってその世界はただキミを歪ませるだけの世界さ こちらの世界にお出で 早く、お出で―――― 辺りは暗闇。カツンカツン、と静寂に響き渡るそれはあたしの恐怖を肥大させた。 (誰か、来る) 胸騒ぎがした。何か良くないモノが来る。 ふとチリーン、と小さな鈴の音が歩く度にしている事に気が付いた。 あたしは恐怖で足がすくんで動けない。真っ暗闇の中に浮かび上がったのは金色の瞳。そして真っ黒な黒髪だ。サラサラと揺れている。一見普通の人に見える。 だが明らかにあたし達には無い物があった。それは黒いネコ耳にゆらゆらと揺れている尻尾。 ハッ、とする。相手の口は三日月のようにニタリと笑っていて口端からはポタポタと血が滴り落ちていた。 「ネェ、アリス。キミは忘れているよ。思い出してボクらの事を過去の事を――早く終わらせておくれ、この物語を」 相手の声は響くせいか二重に聞こえ、聞き取りにくかった。 スッと相手があたしに向かって手をのばしてきた。
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