それは始まりの物語

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しかし途端に険しい顔になって――― 「…アリアお姉様に、あの様な破廉恥極まりない格好をしないで下さいと、ルシファー様から何とか言ってください……目のやり場に困るんです……」 「分かった」 ルシファーから顔を背けるとパラケルススはため息を吐いた。 絶対無理だと思う。 ルシファーは、彼女に頭が上がらないのだから。 ‡‡‡‡‡‡ 「あっ、ルシファー様だ!」 「フラメア……といったか?」 「はいっ、名前を覚えていただいて光栄です!」 城下町で、駆け寄って来た子供達の前に屈み込むと、一人一人頭を撫でてやる。 後ろから続いて来た白髪で露出度の目茶苦茶高い服の女性が、ルシファーの隣に来る。 「アリア様もご一緒だ~!」 「ルシファー、よく飽きないよね……この人気者」 「どんな生き物でも、子供は可愛いからな」 「うわっ、アンタってショタコン!?」 ルシファーを唯一アンタだのショタコン呼ばわりする女性は、背の低い自分でも抱えられそうな子供を選んで抱き上げてやる。 「ルシファー様、今度お城に遊びに行ってもいい?」 「あぁ、いつでも好きな時に来るといい」 「アリア様、今度色んなお話聞かせて!」 「うん、今度ね」 子供達とそれぞれ約束を交わし、大通りを抜けていく。 人気のない森まで来ると、ルシファーが指笛を吹く。 風を切る音と、大きな羽音。 「飛竜……アンタも物好きだね」 紅の鱗をした、前脚と翼が一体になった魔獣・飛竜。 ルシファーの使役する竜王達とはまた違った種族の魔族。 アリアは喉にこちょこちょしてやると、もっとしてくれとせがんでくる。 鱗のザラザラした感触が、微妙に気持ちいい。 「リックもアンタによく懐いてるし」 「馬より速い。俺は飛竜に乗る方が好きだ」 リックの背からアリアに手を差し延べる。 その手をとると、ルシファーがアリアを引き上げる。 アリアはよろけるふりをして抱き着いた。 「うわっ、離れろ!」 「離れたら落ちるでしょ?」 「う……」 体がくっつきすぎて、ルシファーの顔が耳まで真っ赤に染まっているのをアリアは面白おかしく見ていた。
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