夢始まる学園

4/5
前へ
/155ページ
次へ
「杏本さん、どうしたの?」 そう言って教室に入る大助を見て詩歌は固まった。 「薬屋…君?そこにいたの?」 「ゴメン…杏本さんが教室に入った時からいたよ」 詩歌はその言葉を聞いて微笑んだ。 「じゃあ聞いちゃったんだ……ごめんね?迷惑かけて…」 表情を曇らせる詩歌に声を掛けようとした時、人の話し声が聞こえた。 「マズい!誰かくる………来て!」 そう言って詩歌の手を握り屋上へ走る。 「はぁ……はぁ…」 ダッシュで階段を昇った為、肺が痛い。呼吸を落ち着かせ振り向くと詩歌は座り込んでいた。 「ご、ごめん!急に連れ回して…」 慌てる大助を見て詩歌は微笑んだ。 「平気、疲れたけど……ちょっと楽しかった」 楽しかった?あれが楽しかったのだろうか?と大助は思いながらも笑った。 2人で笑った、夕日の光が屋上に降り注ぐ。「綺麗……」 そう言って詩歌は目を細目て町並みを見渡す。夕日が作り出すオレンジ色の世界……その世界はとても好きだった。 「杏本さんが綺麗と思える場所、さっきみたいに笑えたり出来る場所は、杏本さんがいてもいい居場所じゃないかな?」 同じく夕日を見つめながら言う大助の横顔は力強かった。 「私がいても……いい居場所?」 「皆に迷惑をかけるって思ってるみたいだけど違うよ……みんな杏本さんに助けてもらってる。」 「私は……助けてた事なんか無いよ?」 不思議そうに首を傾ける詩歌を見て微笑んだ。 「みんなは杏本さんがいるだけで不思議と安心出来るんだ、俺は杏本さんに………詩歌にいてほしいな……」 呟く大助を見つめる、大助は自分が言った事が恥ずかしいのか顔を赤らめている。 「ありがとう……薬屋君……大助君のおかげで私の居場所を見つけた気がするよ。」 微笑む詩歌を見て大助も微笑む。 「それでね………大助君にお願いがあるんだけど……」 困ったように言う詩歌を見て大助は微笑んだ。 「何でも言ってよ!詩歌が困った時にはいつでも駆け付けるよ!」 大助は詩歌を助けてたい、心の底から笑わせたいと思った。 「ありがとう、あのね?………………休んでた時の勉強を教えて欲しいの?」 大助は凍ついた……大助は人に勉強を教えれるほど頭がよくない訳では無い、むしろ良い方だが……詩歌に勉強を教える事は大助が東大に行くほど難しい難関である。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加