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「杏本さん、どうしたの?」
そう言って教室に入る大助を見て詩歌は固まった。
「薬屋…君?そこにいたの?」
「ゴメン…杏本さんが教室に入った時からいたよ」
詩歌はその言葉を聞いて微笑んだ。
「じゃあ聞いちゃったんだ……ごめんね?迷惑かけて…」
表情を曇らせる詩歌に声を掛けようとした時、人の話し声が聞こえた。
「マズい!誰かくる………来て!」
そう言って詩歌の手を握り屋上へ走る。
「はぁ……はぁ…」
ダッシュで階段を昇った為、肺が痛い。呼吸を落ち着かせ振り向くと詩歌は座り込んでいた。
「ご、ごめん!急に連れ回して…」
慌てる大助を見て詩歌は微笑んだ。
「平気、疲れたけど……ちょっと楽しかった」
楽しかった?あれが楽しかったのだろうか?と大助は思いながらも笑った。
2人で笑った、夕日の光が屋上に降り注ぐ。「綺麗……」
そう言って詩歌は目を細目て町並みを見渡す。夕日が作り出すオレンジ色の世界……その世界はとても好きだった。
「杏本さんが綺麗と思える場所、さっきみたいに笑えたり出来る場所は、杏本さんがいてもいい居場所じゃないかな?」
同じく夕日を見つめながら言う大助の横顔は力強かった。
「私がいても……いい居場所?」
「皆に迷惑をかけるって思ってるみたいだけど違うよ……みんな杏本さんに助けてもらってる。」
「私は……助けてた事なんか無いよ?」
不思議そうに首を傾ける詩歌を見て微笑んだ。
「みんなは杏本さんがいるだけで不思議と安心出来るんだ、俺は杏本さんに………詩歌にいてほしいな……」
呟く大助を見つめる、大助は自分が言った事が恥ずかしいのか顔を赤らめている。
「ありがとう……薬屋君……大助君のおかげで私の居場所を見つけた気がするよ。」
微笑む詩歌を見て大助も微笑む。
「それでね………大助君にお願いがあるんだけど……」
困ったように言う詩歌を見て大助は微笑んだ。
「何でも言ってよ!詩歌が困った時にはいつでも駆け付けるよ!」
大助は詩歌を助けてたい、心の底から笑わせたいと思った。
「ありがとう、あのね?………………休んでた時の勉強を教えて欲しいの?」
大助は凍ついた……大助は人に勉強を教えれるほど頭がよくない訳では無い、むしろ良い方だが……詩歌に勉強を教える事は大助が東大に行くほど難しい難関である。
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